神経症の一つである“ペットロス症候群”

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〈Vol. 9〉 神経症の一つである“ペットロス症候群”
大切なものを失ってしまった悲しみと苦しみ

 犬や猫と一緒に住める家や泊まれる宿、学校まで、ペット関連商品が人気の今。ペットとの触れ合いで癒される人が多い一方、ペットの死を迎えて、悲しみから抜け出せない人も。最近よく耳にするペットロスについて、宇都宮市大寛町のうえの医院・上野裕さんに伺いました。

 米国の精神科医・ホルムスは、人生におけるさまざまな出来事のストレス度を数値に示しています。それによれば、最も大きなストレスは配偶者との死別で、値は100。離婚が73、家族の死と拘禁が63、病気とけがが53、結婚50、失職47と続きます。すなわち、大切なものを失うこと(ロス)が、最も大きなストレスになると言うのです。夫や妻を失った人や、子どもを失った親の深い悲しみは誰もが共有できるものでしょう。問題は、愛着度に個人差があるものを失った悲しみの場合です。
 例えば、愛がん動物(最近ではペット)を失ったことで嘆き・苦しむ人に「たかがペットのことで大げさ過ぎないか」と、慰めよりも軽べつに近いまなざしを向けること。これは、その人をさらに追いつめてしまいます。人は悲しみ・苦しみの中で孤立してしまうと、抑うつと無気力にとらわれがちです。ペットロス症候群がこの状態です。不安の時代において、ペットを愛情と依存の対象とし、そのペットを失って悲哀を経験する方が増えています。それに伴い、ペットロス症候群という言葉を聞く機会が増えてきました。

■ モーツァルトも劇中で主張
 歌劇「フィガロの結婚」の第4幕冒頭で、バルバリーナという少女が「ピンをなくしてしまった」と、悲しみの小アリアを歌う場面があります。ここに流れる音楽は、劇中で最も暗く、人の深淵に潜んでいる無限の悲しみを堪えています。物語ではいわく付きの蕫ピン﨟なのですが「器物をなくすことによってさえ、人間は普遍的な悲しみの極みを味わってしまう可能性があるのだ」とモーツァルトが主張しているように私は感じられます。
 ペットを失うことは、ある人にとってストレス指数100にもなります。犬や猫と生き物同士として接してみると、彼らを人間同様の、それ以上に親愛なる存在と思える時が訪れるかもしれません。ペットロス症候群は決して特殊な病態ではなく、喪失を原因とする神経症の一つなので、独りで悩まずに医師に相談してみてください。