こどもの病気


獨協医科大学小児科教授 杉田憲一のコラムです

第8回 ながびく咳


第8回
ながびく咳

 子どもには、咳(せき)を症状とする病気は多数あります。「ゼーゼー」をともなった咳も多くありますが、ここでは、「ゼーゼー」のないものについて述べます。発熱もなく2週間以上続く咳についてですが、多いのは副鼻腔炎と心因性の咳です。

[ 副鼻腔炎に伴う咳 ]
 就寝後まもなくや、早朝、起床時に多く認められ、湿ったような咳をする。診断時に、喉の奥に、鼻から下がっている痰を認めれば可能性が高い。副鼻腔炎はX線検査などで診断がつきます。治療は、耳鼻科の先生に相談して、症状に応じた治療が必要です。

[ 心因性の咳 ]
 聞いていて、喉の痛くなるような咳です。主に乾いたような、連続して出る咳のことが多い。特徴的なことは、熟睡すると咳込みが止まる。しばしば、咳喘息(実際は小児ではまれ)と言われて来院する患者さんがいますが、喘息の場合は眠っても改善しないことが特徴です。また、熱中しているときは少なくなります。検査でも異常ないと言われたときは、この病気を疑ってみましょう。

[ 百日咳 ]
 2歳以下の典型的な場合は、顔色が悪くなったりし、1週間以内に診断されます。しかし、現在は、百日咳にかかる人は、平均年齢が20歳です。年長児で、発熱がなく2週間以上の場合は疑ってみる必要があります。

[ 咳喘息 ]
 原因は、クーラー、家のほこり、ダニ、花粉、塵の吸入等。アレルギーの原因を特定することは困難。こまめな掃除を。診断は非常に難しく、症状から咳喘息を疑い、治療で良くなれば咳喘息と診断する場合がほとんど。症状は㈰ほかに原因となる病気がないのに、咳が3週間以上続く。㈪かぜの後に続いておこることが多い。㈫ゼーゼー、ヒューヒューや呼吸困難はない。㈬痰はでない。㈭咳は夜間から明け方に多い。㈮冷たい空気、タバコの煙、会話、運動などで咳こみやすい。㈯かぜ薬や咳止めが効かない。治療は吸入ステロイド薬、気管支拡張薬・抗アレルギー薬が有効。
 最後に、頻度が多いものを述べましたが、ながびく咳には、多くの原因があることを知り、より重くなっていくような場合は確実な診断が必要となります。


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第7回 患者の兄弟の気持ち


 子どもの病気が長期化しているとき、患者さんばかりでなく兄弟にも影響が出ます。兄弟の悩みも分かってあげてください。今まで一緒に過ごしていた兄弟がいなくなることに加えて、いくつかの特徴的な悩みが出ることがあります。このような問題に気づいたときは、医療者に相談しても良いと思います。

[健康な兄弟にも上手に対応すること]
 長期に病気を患っているお子さんがいる家族は、精神的にも肉体的にも大変なことが多いものです。両親、特に母親は病気の子にかかりきりになってしまいます。最近、病気の子に加え、健康な兄弟にも、上手に対応することの必要性が指摘されています。
 病院から家に帰ると「お母さんは看病で疲れているのだから、自分のことくらいは、自分でしなさい」とか「○○ちゃんは、病院で痛い検査にも負けずがんばっているのよ。おにいちゃんもしっかりしなくちゃね」とか言ってしまうのが普通です。お母さんの帰りを待っていた子どもには、つらい言葉です。 
 ときに、このようなことが長く続くと、子どもは自分が健康でいることをうらんだりもします。ときに、病気の子が熱を出すと、家族中が大騒ぎをするのに、健康な子は熱を出しても「寝てなさい」と言われるくらいで、明らかな差を感じます。

[年齢が大きくなると疎外感が生まれることも]
 年齢が大きくなると、家族のみんなが病気の子どもを一生懸命に援助しているのに、自分だけは何もすることができない。そういった疎外感が生まれることがあります。そのことは、ときに学校生活にまで影響します。兄弟の人数が少ない現在では、より起こりやすいといえます。

[予防法は?]
 絶対的な予防法はありません。できる限り、患者とお子さんを含めて家族が面会の機会を持って、全員が現状を知る。さらに、年齢に合った説明をするのがよいといわれています。
 このような疎外感を持つのは、子どもだけではありません。仕事に忙しい父親にも見られ、夫婦関係にも影響がでる場合があります。さらには母と祖父母間にも見られることがあり、治療に影響することさえあります。


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第6回 熱中症


 「車内にいた子どもが熱中症」「炎天下で野球をしていた高校生が熱中症」との記事を目にする季節です。熱中症の発症には、気温に加えて湿度も関係しています。そして、治療で大事なことは、熱中症と診断または疑いがあったら、必ず医療機関を受診することです。

[熱中症とは]
 ㈰熱痙攣(ねつけいれん)㈪熱疲労㈫熱射病に分類され、最近は重症度から㈵〜㈽度に区別されています。
 ㈵度(軽症)は四肢や腹筋などに痛みをともなった痙攣(全身の痙攣ではない)、腹痛。さらに失神(数秒間程度)、脈拍が速く弱い、呼吸数の増加、顔色不良、めまいなど。
 ㈼度(中等度)は、めまい、疲労感、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などのいくつかの症状が重なり、加えて血圧の低下、頻脈、皮膚の蒼白など。
 ㈽度(重度)は、意識障害、おかしな言動や行動、過呼吸、中枢神経系を含めた多臓器障害。重篤で、死亡に至る危険性が高い。
[スポーツによる熱中症の予防]
 ㈰気温、湿度などを把握し、それに応じた運動量を守る。涼しい時間帯に行う。適切な水分補給を行う。㈪暑さに徐々にならしていく。体が暑さになれていない梅雨明け直後に多い。㈫体調の悪いときは運動を控える。㈬服装に気をつける。㈭具合が悪くなった場合には、早めに運動を中止する。
[重症になりやすい幼児の熱中症]
 体温調節能力、発汗能力、腎臓(じんぞう)の働きが成人より未熟であるうえに、体内から表面への熱運搬能力も低い。また、水分摂取の有無で影響を受けやすいなどが原因です。室内で静かにしていても起こることもあります。実際、幼児が「かくれんぼ」で熱中症になり死亡したこともあります。
[治療]
 1意識の状態を確認。あわせて、呼吸、脈拍、顔色、体温、手足の温度などのチェックを。
 2㈰休息…安静を保てる環境へと運ぶ。衣服を緩める。㈪冷却…涼しい場所で休ませる。㈫水分補給…意識がはっきりしている場合に限り、水分補給をおこなう。意識障害や吐き気がある場合には、早急に医療機関の受診が必要となる。


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第5回 給食がにがて


 楽しく幼稚園、小学校生活を送れていますか? 最近、「給食が食べられない」という相談が多くなっています。単なるしつけだけでなく、本当に食べることのできないお子さんがいることが、わかってきています。その1つにアスペルガー症候群(高機能自閉症)が考えられています。

[特徴]
 偏食がある。例えば、離乳食のころは何でも食べていたが、3歳ごろから毎日、トンカツ・鶏のから揚げ・白米・うどん・ラーメンしか食べない。そのため「幼稚園や小学校の給食が心配。また外食もままならず、友達や親せきの家に遊びに行けない」と悩むことが。相談しても「体格がいいので様子を見るように」と。また、見た目・調理法を変えても、味覚・触覚(舌)が過敏でわかってしまい、うまくいかないことがほとんどです。
[本人の言い分]
 「食べたことがないものは怖い」、「トマトの赤い色、ピーマンの緑色が嫌い」。嗅覚、触覚にも問題があることが多いので、「においが嫌い」とも、「歯を磨きたくない」と言うことも。
[アスペルガー症候群]
 ㈰社会性の障害(他人とのかかわりでふさわしい行動がとれない)。暗黙のルールがわからない、太っている人に正直に「太っているね」と。同年齢の子どもと遊ぶのが苦手㈪他人とコミュニケーションをとることが苦手。話がよく飛んだり、相手が興味のないことを一方的に話したり、話が回りくどい㈫こだわりが強いなど考えと行動に柔軟性がない。人の名前や誕生日を覚えたり、歴史の年号を覚えたりが得意。また趣味としてカード、車のおもちゃやレシートなどの収集。この症候群には五感(味覚、視覚、聴覚、触覚、嗅覚)の異常が存在することがある。多くは過敏。逆に鈍感(鈍麻)のときもあり、食べ物への無関心から、「うちの子は1度もおいしいと言ったことがない」というお母さんも。
[対策] 
 「早く食べなさい」「全部食べなさい」が最もつらい。反面好きなお菓子を食べたり、コーヒーを飲んだりすると落ち着くことも。また、落ち着くために唇や爪をかむことが多いとも。いずれにせよ、気持ちを理解して対応することが必要です。心当たりのある場合には、受診を勧めます。 


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第4回 予防接種


 予防接種は済んでいますか? 万一、麻疹(はしか)などになると、学校を休まざるを得ないばかりか、病気が重く合併症に苦しむこともあります。定期接種のものはもちろんですが、任意接種のものも受けることをお勧めします。まず、これまでの予防接種歴を確認しましょう。

[接種の必要性]
 予防接種は、各種の感染症に対する免疫を持たない人のために、あるいはすでに持っている抵抗力をより高めるために行われるものです。「麻疹ゼロ(0)作戦」と言われるように、将来この感染が消失し、予防接種がなくなることが理想です。
[種類]
 定期接種(小児の場合)はジフテリア・百日咳・破傷風(DPT三種混合ワクチン)、ポリオ、麻疹・風疹(MRワクチン)、日本脳炎(休止中)、結核(BCG)。任意接種(主なもの)は、おたふくかぜ、水痘、b型インフルエンザ菌(Hib)、インフルエンザなどです。
[成分による違い]
 ワクチンには、生ワクチン(ウイルスや細菌を人体には影響ないほどに弱めたもの)、不活性化ワクチン(ウイルスや細菌の性質を失わないで、感染し発病する能力をなくしたもの)、トキソイド(細菌の出す毒素を、免疫をつける能力をそのままにして無毒化したもの)の3種類があります。
[接種間隔]
 いくつかのワクチンを接種するとき、生ワクチンの後は4週間(正しくは27日)、不活性化ワクチンの後は1週間(正しくは6日)あけなくてはなりません。 
[予防接種をしていない場合、不十分の場合]
 生ワクチンの場合は、市町村からの補助を考慮しなければ、いつ接種しても問題ありません。不活性化ワクチンは回数が多く、正しく接種することが必要ですので、主治医の先生とよく相談してください。
[接種不適当者および接種要注意者] 
 「接種不適当者」とは㈰発熱のある人㈪重篤な急性疾患になっている人㈫接種する液の成分で、以前に重い副作用を起こしたことがある人など。「接種要注意者」とは㈰慢性の病気がある人㈪過去にけいれんのある人㈫免疫不全の診断がなされている人および近親者に先天性免疫不全症の人がいる場合などです。 


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第3回 急性咽頭炎・中耳炎


発熱を繰り返す病気
急性咽頭炎・中耳炎

 乳幼児で頻度が多いのは、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)または肺炎球菌によるものです。これらの菌は中耳炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、咽頭炎、肺炎、時には髄膜炎の原因となります。
[症状は?]
 多くの患者さんが1カ月に一度は決まって発熱するというようになります。いったん発熱すると、1〜2日では解熱しないことがほとんどです。ただ、熱が続いていても比較的元気なこともあります。また、午前中は解熱していることが多く「今日で治ったかな」と安心していると、夕方からまた熱が出て、救急外来を受診するということになります。血液検査をすると、CPR検査(細菌感染症などで重症ほど値が大きくなるタンパク)が陽性を示し、多くで白血球数が増加しています。
[なぜなるの?]
 これらの菌は子どもの鼻やのどにいますが、多くの人は無症状です。繰り返す人には菌に対する抵抗力(抗体)に異常のあることが分かってきています。ただし、病気を繰り返していた人も3歳ごろまでには抵抗力がついてきます。そのため、この病気にかかるのは多くが3歳以下です。
[治療は?]
 抗生物質を使用します。経口投与(内服)による治療では、現在、最も効くといわれている抗生剤を使用してもその効果は十分ではありません。最近、これらの菌が薬に抵抗を示す(耐性菌と呼ばれる)ことも多く、より治りにくくなっています。そのため、血液検査で病気の勢いが強いと判断したときは適切な抗生剤を選択し、静脈内投与(点滴)による治療が必要となります。効果があった場合、多くは24時間以内に解熱します。
[発熱を繰り返すそのほかの病気は?]
 3歳ごろからは扁桃腺炎、また腎臓などに異常があったときの尿路感染症(特に腎盂腎炎)なども多く経験します。時には、何か重い病気が潜んでいるときもあります。


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第2回 インフルエンザ


インフルエンザ
 この季節、急に発熱がみられ、全身がだるいような症状があったときには、インフルエンザをまず考えましょう。最も重症な合併症は脳症ですが、ひきつけや脱水症になることもしばしばあります。そのため、インフルエンザと診断された場合には、治療について主治医の先生とよく相談しましょう。

 ヒトに感染し、発症するインフルエンザにはA型、B型の2種類があります。
[診断は?]
 鼻の奥の咽頭に近い部分から検体を採取後、20分程度で結果がわかります。A型とB型の区別も可能です。しかし、発熱後すぐではウイルス量が少ないため陽性と判定されない場合があります。また、タミフルなどの抗ウイルス剤を内服しても24時間以内であれば陽性を示します。家族などにインフルエンザの人がいて、強くインフルエンザが疑われ治療を優先した場合でも、後日診断を確定することができます。
[治療は?]
 抗インフルエンザ薬を発熱後48時間以内に用います。A型・B型両方に有効なオセルタミビル(商品名:タミフル)および吸入薬のザナミビル(商品名:リレンザ)、A型にのみ有効なアマンタジン(商品名:シンメトレル)があります。最近は、これらの薬に耐性を示す(薬が効かない)場合があります。タミフルは10歳以上の小児には、せん妄などの副作用(因果関係は不明、最近は否定的)から特別の場合を除いて処方を控えています。また、解熱後2日で、登園、登校が許可されます。
[合併症は?]
 インフルエンザ脳症が最も重要です。発熱から脳症の症状が現れるまで、数時間〜1日と短いのが特徴です。また、脳症は6歳以下に多く、ひきつけとの区別がかならずしも容易でありません。インフルエンザではアセトアミノフェン以外の解熱剤の使用はやめましょう。それ以外の解熱剤を使用した人で、脳症が多く起こっています。
[予防は?]
 インフルエンザワクチンを受けましょう。しかし、小児では、ワクチンは感染予防より重症化(脳症)の防止に重点が置かれた予防法です。タミフル、リレンザにも予防効果がありますが、その適応は主治医の先生に相談しましょう。


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第1回 発熱


第1回
発熱

 子どもの発熱では、機嫌、食欲、睡眠の状態はどうか、またゼーゼーはないかなども重要です。熱の高さは、重症度に関係ないとの意見もありますが、熱が高いほど病気の勢いが強いと思ったほうが良いでしょう。また、受診は午前中が最善だということを心に留めておきましょう。

 これから風邪やインフルエンザの季節です。今回は、お子さんの熱に気づいたときの注意について述べます。
[年齢は?]
 まず、お子さんの年齢を考えます。生後1カ月以下の場合は、入院が必要となることも。1カ月〜4カ月では、入院はともかく、検査が必要です。その結果、機嫌もよく検査に異常がなければ、外来での治療で経過を見ます。6カ月以上で、元気であれば、夜間の場合は次の日の診察で大丈夫と思います。
[熱は何日目?]
 4日以上続く発熱の場合は、元気でも医師の診察が必要です。また、4日以内でも、前日より元気がないときも注意が必要です。
 感染症(特に細菌による場合)では、午前中は平熱で元気ですが、午後の4時くらいから急に上昇することが多くみられます。そのため、心配になり、救急外来を受診することになります。前日の夜間に熱があった時は、平熱になっていても受診することを勧めます。
[治療は?]
 38・5度以上でつらそうであれば解熱剤の使用を考えてよいと思います。ただ、1歳以下では使用しないことが多くなっています。副作用の恐れから、小児ではアセトアミノフェン以外の解熱剤の使用を控えています。また、頓用での使用(必要な時に飲む)が基本です。ただ、解熱剤の効果は一時的なものです。熱性けいれんを起こしたことのある人は抗けいれん剤との併用を勧めます。熱に加えて、食欲が不十分のときは輸液(点滴)してもらうと、多くは楽になります。
 氷枕は熱中症以外での解熱効果は少なく、お子さんが嫌がれば使う必要はありません。「発熱時のお風呂」は食欲がないときは控えた方がよいでしょう。
 発熱の原因が分かれば、その治療が最優先であることは、言うまでもありません。  


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