こどもの心と病気
<こどもの心と病気>
- 〈年末年始のこどもの急性疾患の対処法〉
- 病気の子の親の心
- 子どもの虐待事件
- 不登校
- 中学生の凶悪犯罪
- 夜尿症
- 神経性食欲不振症
- ネグレクト
- 子どもの虐待
- 燃え尽き症候群
- 過換気症候群
- 不登校
- 子どものうつ病
〈年末年始のこどもの急性疾患の対処法〉
| 〈年末年始のこどもの急性疾患の対処法〉 ● 年末は多くの小児科の開業医はぎりぎりまでやっていますので、開業医にかかりましょう。 ● 冬はインフルエンザ、嘔吐・下痢が流行しています。年末にかかったときは、薬は多めにもらっておきましょう。 ● 笑顔が子どもの顔から消えた時は要注意です。いつもと様子が違うという親の判断は正しいことが多いので、子どもをよく観察しておきましょう。 大学病院の救急外来は混みますから、待ち時間が長くかかり、別の病気をうつされる可能性がありますので、できるだけ休日診療所、夜間診療所にかかって、そこで手におえないと判断された時に、大学病院を紹介してもらうのが良い方法です。 インフルエンザはまだ大流行はしていません。この年末・年始は多分大丈夫だと思います。予防注射も足りなくなってきていますが、近くの医者にまだあれば、受けておかれるのがよいでしょう。多分流行は1月末ぐらいからだと思います。手洗い、うがい(緑茶か紅茶がよい)、マスクの励行をすることをおすすめします。まだインフルエンザの時に、使用してはいけない下熱剤を処方する医者がいます。そういうことのない小児科医で、診てもらうようにしてください。 熱性けいれんを持っている人は、予備の抗けいれん剤の坐薬を確保しておいてください。なければ年内にもらっておいてください。 嘔吐・下痢が流行しています。大体半日か1日で治ります。赤ちゃんや幼児では脱水をきたしやすいので、医者にかかった方がよいでしょう。吐くからといって、水分を与えないのはよくありません。少量の電解質の入った水分をこまめに与えましょう。それで、飲んでくれて笑顔がみられていれば、医者にかからなくても大丈夫です。下痢の時に注意してもらいたいのは、血便があるかどうかです。血便があると、いくつか恐い病気がありますので、必ず医者にかかってください。 突然熱がでても、元気がよく、笑顔がみられていれば、すぐに医者にかかる必要はありません。熱さましシートや氷まくらや、腋窪を冷やして様子をみましょう。高熱だけで、頭がおかしくなることはありません。 はじめてひきつけをおこされたときは驚かれると思います。熱の有無、ひきつけの時間だけはチェックしておきましょう。熱がないひきつけ、ひきつけ時間が10分以上(20分以上は入院)、何回もひきつける時は、直ちに医者にかかりましょう。 年末・年始忙しくて子どもへの注意がおろそかになると、溺水、大人の薬の服用、酒を飲んだりしますので、余裕のある生活を心がけて、子どもの行動に注意してください。 |
病気の子の親の心
| 〈Vol. 22〉 病気の子の親の心 命に危険があるような重篤な病気をもった子どもの親の心のケアを十分にしないと、虐待や両親の離婚が生じ、家庭は崩壊します。回りの人が支えてあげる必要があります。 命に危険があるような重篤な疾患としましては、重篤な心臓病を合併した染色体異常、白血病や悪性の固型腫瘍、生まれつきの免疫不全などがあります。最近は医学が進歩しましたので、生命予後は良くなりました。しかし、そのような子どもを抱えた親の心の負担は大変です。まず、子どもがそうなったのは自分のせいではないかと自分を責めます。 次に、子を救えるのは自分の愛情だけではないかと、すべてに優先してその子の世話をします。そうなったとき、周囲の人(夫、祖父母、近所の人、医療ケースワーカー、児童相談所の人、医療チームの人)が支えてあげないと、ほかの子どもや夫婦の危機がきます。夫婦が一番支え合っていかなければいけないのに、そのような子どもを持った何組かの夫婦が離婚してしまったのを知っています。また、母親が現状に耐えきれなくなって、養育を放棄(虐待の一種のネグレクト)してしまうことすらあります。一概に母親を責める訳にはいきません。日本ではそのような家庭への支援体制が遅れています。20年前に留学したカナダでは支援体制がしっかりしていました。 3歳の女の子です。血液の不治の病気にかかってしまいました。母親は遠方から毎日面会にきていました。しかし、周囲の支援体制がうまくいかず、母親は看護に疲れてしまいました。この病気の子ども以外にも、精神的に異常行動をおこす子どももいて、パニックに陥ってしまいました。突然、面会にもこなくなり、たまに病院にきても子どもに会おうとしなくなりました。主治医は、医療ケースワーカーや児童相談所の人にも実状を話して、母親の支援体制を作ろうと努力しましたが、母親の頑なな心は開かれず、子どもは周囲の大人におびえるようになってしまいました。病気も悪化し、最悪の状態となってしまいました。そのようなとき、親戚の人が手をさしのべて、何とか最悪の状態は切り抜けることができました。 日本では子どもが病気になったとき、両親だけに負担がくるようになっています。もっと地域社会の人や医療チームの人が親の心のケア、経済的支援体制をバックアップしていかなければなりません。 |
子どもの虐待事件
| 〈Vol. 21〉 子どもの虐待事件 子どもの虐待事件が増えています。大阪では中学生の兄弟に虐待が加えられ、兄は意識不明のままです。学校や児童相談所の対応にも問題があります。 子どもへの虐待は明らかな暴力行為があればはっきりしますが、食事を与えないなどのネグレクト(無視)は、見逃されやすいものです。大阪の事件では、兄弟に虐待が加えられ、弟は実母の所へ逃げて、保護されましたが、弟よりひどい仕打ちを受けていた兄は逃げる気力もなく、意識不明となって、3カ月たっています。学校や児童相談所も心配して家へは行っているようですが、会わせてもらえないといって、引きさがって帰ってしまっています。 これは明らかな怠慢であります。虐待している親が子どもに会わせてくださいと言って、会わせるはずがありません。強権を発動しても、保護すべきだったのです。 同様なことが栃木県でもみられます。確かに児童相談所は人手が少なく、忙しいでしょうが、やるべきことはやってもらわないと困ります。人手が足りないなら、もっと行政に働きかけて、人手を確保してもらいたいものだと思います。 また、行政ももっと児童福祉に関心をもち、予算をつけてください。医者が虐待があり、退院させると危険であると思っても、親が強く退院を希望すれば、退院させざるをえません。あとは児童相談所の人にバトンタッチです。面会に行って、会うのを拒否されたり、居留守をつかわれて、帰ってくるようでは困ります。そういうことこそ、危険な徴候なのです。児童相談所員は立ち入り調査(家庭に直接立ち入り、子どもの様子を確認。親が抵抗すれば警官の助けを要請し、子どもの命が危ないと判断すれば一時保護)を実施してください。面会に応じてくれる親なら、多少の虐待があっても、周囲の援助で親の虐待はなくなっていきます。面会を拒否することこそが問題なのです。 児童相談所だけでなく、近所の人や学校・幼稚園・保育園の先生も面倒なことに巻き込まれるのはいやだと思わず、虐待らしき徴候があるときにはもっと勇気を持って、子どもを助けてあげてください。 日本ではまだまだ親権が強く、どこまでがしつけで、どこまでが虐待の区別もつきにくいことがありますので、児童相談所も含めて親に対して腰がひける傾向があります。そういうときには、小児科医に相談してみてください。 小児科医は、だれでも子どもを助けたいと思っている人たちですから、虐待かどうかは判断つきます。 |
不登校
| 〈Vol. 20〉 不登校 不登校について再度追加します。家庭内の両親の不和によって、仲裁役の中学生の男の子は心配で不登校となってしまいました。 不登校については、平成12年9月から8回、平成14年7月にこどもの心と病気シリーズで1回、合計9回述べましたが、新たな形の不登校児を最近経験しましたので、また追加します。 14歳の男の子です。父親は暴君で難治性の病気をもっている母親に、暴力と口汚い言葉をあびせ、生活費も与えてくれません。弟が2人いますが、父親は弟ばかりかわいがり、この子には辛く当たります。それは彼が母親の唯一の味方であり、母親をかばうからです。家の中は暗く、家庭の温かさがありません。彼が中学校へ行っているときに、父親が母親に暴力をふるうのではないかという心配で、ついには学校へ行けなくなりました。さらに、味方をしていた母親に対しても、衝突するようになりました。それは思春期の男の子が母親を支える限界に達してしまったからです。普通はいろいろな悩みを母親に聞いてもらい、まだ甘えていたい年頃なのです。そのイライラを爆発させ、弟たちとも衝突するようになりました。まったく勉強に身が入らなくなり、こまった母親が彼を連れて私の外来を受診しました。母親の話だけを聞くと惨憺(さんたん)たる家庭で、母親は離婚歴がありました。難病をもちながら、生活費を父親がくれないため、パートの仕事をしながら、生活費にあてていました。話を聞けば、離婚するよりほかに手がないように思われました。彼には精神的な病気はなく、このような家庭では誰でもが起きうる心因性反応でしたので、少しでもイライラを取り除く精神安定剤を処方しました。 その後母親は故郷の長野県へ数週間逃亡しました。次に来院したときには母親も彼も明るくなっていました。その理由は、父親がようやく母親の難病について理解してくれ、生活費も与えてくれるようになり、家庭に明るさが戻ってきたからです。それとともに彼も学校へ行くようになり、勉強する意欲もでてきました。この夏にはアメリカにホームステイしたいというほどに積極的になりました。弟たちとの衝突もなくなりました。 離婚しか解決策はないと思っていましたが、劇的に夫婦が和解して、本来の家庭の姿に戻ってくれました。この関係が継続することを祈るのみです。離婚はできれば避けたいことですが、仮面家族で生活していくくらいなら、離婚する方が良いでしょう。夫婦・家庭内のことまで医療者が踏み込むことは困難です。家庭の団らんが子どもの成長には一番大切です。 |
中学生の凶悪犯罪
| 〈Vol. 19〉 中学生の凶悪犯罪 中学生による凶悪犯罪が、マスコミを騒がせています。このような問題行動をおこした子どもたちは、家族生活に問題があることが多いです。 問題行動をおこした子どもの家庭環境を調査すると、いろいろと考えさせられます。子ども自身にもある障害を持っていることがありますが、それは保護者の対応によって未然に防ぐことができることが多いです。 少子化によって一人子が増加し、兄弟げんかの経験もなく、親の過剰な期待を重荷と思っている子どもが多くなりました。父親の存在が希薄となり、なんでも子どもの要求を受けいれてあげるものわかりの良いパパが増えました。一方、母親は父親がしっかりしていないので、厳しすぎる人が増えました。デフレ経済で、失業率も高く、リストラされる父親も多くなり、父親は自分自身に自信をなくしています。そのような父親ではこどものしつけ、教育をすることはできません。 家庭での親子関係は、特に乳幼児期の育て方でその子の性格は決まってくる傾向にあります。親の前で安らげない子どもが増えていますが、それは乳幼児期にみたされない生活を送った結果です。厳しいしつけは自律心を妨げます。愛情をもって子どもに愛情が伝わる中で、きちんとしたしつけをして、その結果を性急に求めずじっくりと待ってあげることが大切です。 子どもを思いどおりにしようとする親がいますが、子どもに満点を期待せずに平均点の60点でよいと思うようになれば、親にも心の余裕が持てるようになり、自然とそのことは子どもにも伝わり、やすらぎのある、笑いのたえない家庭となります。 12歳の女の子です。2人兄弟の姉です。下の子は、慢性の重篤な疾患を持っています。そのため、両親の関心はいつも下の子に向けられていました。その子は12歳になるまで、親に反抗したこともなく、まったく手もかからず、成績も良い両親にとって自慢の子でした。 ある時突然腹痛が出現し、親に訴えましたが相手にされませんでした。そのことが引き金となって、その子は家庭内暴力を起こし、学校へも行かなくなりました。両親は理由がわからず、私の所へ相談に来院しました。その子とじっくりと話し合った結果、彼女は本当は両親に甘えたかったし、反抗したい時もあったが、じっとがまんして良い子を演じ続けてきて、それに耐えきれなくなってしまったとのことでした。両親に彼女にも愛情を注ぐように忠告し、カウンセリングと薬物療法で改善してきています。 |
夜尿症
| 〈Vol. 18〉 夜尿症 夜尿症に対して従来から使用されてきましたが、実際は保険適応が認められていませんでした薬剤が、平成15年6月より保険適応が許可されましたので、その薬剤について述べます。 その薬剤は点鼻薬で、尿の産生を抑える薬剤です。寝る前に点鼻して、夜の尿量を低下させることによって、夜尿症を治す薬剤です。ですから、夜尿症の中でも夜間の尿量がその子の膀胱容量よりも多い子に、劇的に効果があります。 この薬剤は本来、尿の産生を抑えるホルモン(下垂体後葉から分泌されるホルモン)の分泌不良となっています中枢性尿崩症として開発され、保険適応がこの診断名のみで許可されていました薬剤です。 点鼻薬のため、上気道炎やスギ花粉症などで鼻汁がたくさん出ている子どもには、鼻粘膜からの吸収が不良のため、あまり効果を期待できません。そのため、外国ではこのホルモン剤の飲み薬が開発されて、利用されていますが、残念ながら日本ではまだ手に入りません。 この度、夜尿症の保険適応の許可が、平成15年6月24日におりましたのは、従来のものと1回の使用量が異なります。従来のものは、1噴霧2・5mgでしたが、今回夜尿症として許可されましたものは、1噴霧10mgです。通常の使用量は1噴霧ですが、最高2噴霧まで認められています。1噴霧の量が4倍に増えましたので、くれぐれも間違えないで使用してください。 寝る前に水分を大量に飲んで、誤って従来の使用回数を使用してしまいますと、この薬剤の副作用が出現してきます。すなわち水中毒です。水中毒を起こすと、低ナトリウム血症となりまして、けいれん・脳浮腫をきたしますので、くれぐれも注意して使用してください。 夜尿症はこの欄で何度も取り上げてきました。もう一度前の夜尿症の項目を読んでください。要約します。 小学生になっても毎晩夜尿をしているようならば、夜尿症の専門医を受診して、治療してください。夜尿症の原因はいろいろあります。今回述べました抗利尿ホルモン剤の点鼻薬が効果がある場合もあります。しかし別の原因、例えば膀胱容量が小さい場合、ストレスによる二次的な原因による場合には、別の薬剤と対処法があります。どのタイプの夜尿症であるかを適切に診断してもらって、治療してもらってください。排尿を少しガマンすること、夕食後の水分を控えるだけで夜尿症が治ることもあります。いろいろな薬に反応しない子もいます。あせらず、怒らず、しからずの原則で保護者は対応してください。 |
神経性食欲不振症
| 〈Vol. 17〉 神経性食欲不振症 神経性食欲不振症はこどもの心と病気のVol・7で述べましたが、別の子について今回は述べます。問題を解決する鍵を持っている人は今回はおばあちゃんです。普通は母親です。 神経性食欲不振症は中学生・高校生の女の子に起きやすい病気です。主として母親との葛藤が原因で起きます。発症年齢が早いほど、複雑な家庭環境があり、簡単には治りません。今回の子も小学校5年生の春に発症し、中学校2年生になりました現在もまだ体重は元に戻っていません。 今回の子は、三人姉妹のまん中です。父親は会社員で、母親は中学校の先生です。おじいちゃんは心筋梗塞を起こして、療養中で元気がありません。おばあちゃんは一人元気で、両親が働いていますので、家事・育児を一手に引き受けています。三人とも頭が良く、素直な子ですが、おばあちゃんは姉と妹には優しくしていますが、なぜかこの子とは相性があわないのか冷たい態度で接していました。本人はそのため母親に甘えたかったのですが、母親が忙しいため、十分にだれにも甘えられずにいました。表面的にはおとなしい、手のかからない良い子でしたが、内面は負けず嫌いな、甘えっ子でした。 小学校5年生の春の運動会の練習中に頑張りすぎて、疲れ切ってしまいました。練習でもだれにも負けたくなかったのです。その練習の疲れがきっかけとなって、食事がとれなくなり、急速に体重は減少しました。 近くの大きな病院に入院しましたが、主治医とおばあちゃんとがうまくいかず、自主退院してしまいました。そこで、私の所に来院しました。入院させ、食事は自分では一口も食べないため、一口ずつ赤ちゃんのように食べさせました。夕食は母親に来てもらい同様のことをしてもらいました。方針として母親への甘えが十分でなかったと解釈して、母親に好きなだけ甘えさせました。この方法で良くなり、退院しましたが、自宅ではおばあちゃんと衝突して、また食べられなくなってしまいました。本当はおばあちゃんに接し方を変更してもらいたかったのですが、うまくいかず、再入院となりました。今度は自分で食べて体重が増えたら、外泊してよいという条件づけで治療し、再び自分で食べられるようになりましたが、ある体重になると食べるのを拒否するくり返しで、今に至っています。 この例のように家庭が健全な機能をしていないと、いろいろな心の病気が発症してきます。やはり家庭の中心は、どんなに忙しくても両親がその役割を担うのが一番です。 |
ネグレクト
| 〈Vol. 16〉 ネグレクト 前回に引き続いて虐待について述べます。虐待のうち少しわかりにくいネグレクトの話です。周囲の人が気がついて、保健婦さんや医者に連絡してください。 ネグレクトは前回述べましたように親が精神的に疲弊(へい)し、親としての能力がかなり低下して、わが子への関心が向けられなくなっている状態です。子どもは親から放置され、栄養不良の状態となって、発見されることが多いです。 生後6カ月の女の子です。父親は19歳、母親は17歳です。二人目の子です。1歳6カ月の姉がいますが、母親に育児能力がありませんでしたので、母親の実家の母親が育児をしており、順調の発育をしています。本児の妊娠中も定期健診はほとんどしておらず、生まれる直前になってようやく病院に入院して、出産しました。本児の出生時体重は予想より良く、標準体重でありました。しかし、出生しても出生届けを出さず、親としてやるべきことをやりません。父親は調理師ですが、一定の所に勤めることができず、転々としています。子どもを育てる意欲はありません。また父親の母親は同居していますが、夜に仕事をしており、孫の面倒をみる気はありません。母親の実家の母親は心配していますが、最初の孫の面倒だけで手いっぱいの状態で、最初のうちは本児を引き取ることができないとのことでした。 家の中は清掃もしておらず、乱雑状態です。本児が着ているものも汚れていました。出生時、標準体重であったものが、ミルクを十分に与えず、体重の増加は良くありませんでした。4カ月検診で、2カ月相当の体重しかないので、入院させました。入院後ミルクを十分に与えたところ、1カ月で1kg以上の体重増加を示しました。入院中両親は、両親としての自覚がなく、一度も面会に来ませんでした。このまま、退院させれば、また体重は減少し、子どもの精神発達にもよくありません。児童相談所が間に入り、何度となく話し合った結果、長女と同様に母方の祖母へ預けることになりました。 このような親としての自覚もなく、避妊の仕方も知らずに、中学生・高校生が妊娠し、出産しています。多くは人口中絶していますが、妊娠していることすら本人も周囲も気づかずに、手遅れとなって出産してしまいます。このような状況で出産した家庭環境はここで述べたケースと同様に家庭とは言えない状況です。 いま栃木県では若者に対する性教育を積極的に行っていますが、まだまだです。一番の基本は、家庭があるべき姿の家庭であることです。性教育だけでは限界です。 |
子どもの虐待
| 〈Vol. 15〉 子どもの虐待 最近マスコミをにぎわせている問題として、子どもに対する虐待があります。この虐待は大きく分けて4つに分けられています。 小児への虐待は身体的虐待、小児無視(ネグレクト)、性的虐待、心理的虐待の4つに大きく分けられていますが、日本では身体的虐待以外は見過ごされることが多いです。身体的虐待は、外傷の残る暴行あるいは生命に危険のある暴行を、親または親に代わる養育者によって、反復・継続的に、単なるしつけ・体罰の程度を越えて行われるものであります。その死亡率は、5~27%に及びます。虐待する親もかつては、自分が虐待を受けた経験を持つ人が多いです。被虐待児は身体的には低身長、極度のやせ、多発性骨折(新旧の入り交じった骨折)、多数の皮下出血・打撲傷、不自然な火傷(たばこの跡、アイロンの跡)、不潔な皮膚、円形脱毛症などがみられます。神経学的発達では、頭部の外傷の結果として、知的発育・言語発達・運動機能発達の遅れを示します。 ネグレクトとは親が精神的に疲弊(へい)し、親としての能力がかなり低下して、わが子への関心がむけられていない状態です。子どもは親に完全に見捨てられた状態です。性的虐待は、日本では隠されて表面にでてこない風土があります。心理的虐待は表面上は子どもは傷害を受けていませんが、親から「馬鹿、死ね、おまえなんか生まれてこなければよかった」などの言葉による暴行であり心理的な傷を子どもは負います。 3歳の男の子です。けいれんを主訴として、救急外来を受診しました。体重は10kgしかなく、背も低く、上肢にタバコを押しつけられた火傷痕があります。すぐに脳のCTをとったところ、頭蓋内出血の所見を呈していました。母親はウロウロして、こちらの質問にもうわの空で、話す内容が支離滅裂です。全身の骨のレントゲンを撮ったところ、上肢や助骨に骨折所見を認めました。ただちに入院させ、親とは分離させて治療をしました。被虐待児と診断し、児童相談所へ連絡しました。親はけいれんが止まった時点で退院させようとしましたが、以前に親に虐待を絶対させないことを約束して退院させて、不幸な結果を体験しましたので、児童相談所と相談して、退院後は乳児院にひきとってもらいました。 虐待のあることが明瞭なときは、早い段階でみつけてあげることが大切です。医療者だけでなく、地域の人々、児童相談所、警察とも協力して、子どももその親も支援して行く必要があります。近所の人は見て見ぬふりをしないで、哀れな子を助けてください。 |
燃え尽き症候群
| 〈Vol. 14〉 燃え尽き症候群 今まで活発に勉強に、スポーツに情熱を燃やし、トップを走ってきた子どもが突然何もする気もなくなってしまう燃え尽き症候群について述べます。 これは子どもの性格が律義、従順、勤勉すぎることが多いです。親の期待に応じて、がむしゃらに勉強にスポーツに頑張ってきて、その成績もトップクラスを維持してきた子が、ついには精神的にも肉体的にも限界を越えてしまい、突然燃え尽きてしまいます。突然何もする気がなくなり、朝も起きられなくなってしまい、不登校となることが多いです。時には頭痛、腹痛、脱力感、肩こり、嘔気などの身体症状を伴うこともあります。親は本人が楽しそうに情熱的に勉強やスポーツに没頭しており、親が無理矢理に強制していた訳ではありませんから、はじめその状況を理解することがなかなかできません。とにかく燃え尽きてしまったのですから、次のエネルギーがたまってくるまで、休養させることが大切です。体を休める(学校へ行かない)だけでなく、心の休養(ボーッとテレビやビデオやマンガを見る)も必要です。家族はそのことを理解してあげなければなりません。決してうつ病と同様に「今までやってこれたのだから元気を出して頑張りなさい」などと励ますことは逆効果です。休養、カウンセリング、薬物療法(睡眠薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などを組み合わせて時間をかけて治療にあたります。エネルギーはたまってきます。 13歳の男児です。一人子で、両親は離婚して母親と一緒です。患児は母親に心配かけまいと本当は母親に甘えたいのにガマンして、学習塾、そろばん塾、剣道、サッカーに情熱を燃やしていました。学校の成績も良く、運動もレギュラーでした。中学生になって、学校を休みがちになり、人生に疲れ、生きている喜びがなくなってしまいました。朝は起きられず、だるくて、生きているのが面倒と思うようになりました。そういう状態で母親につれられて私の外来を受診しました。学校はしばらく休ませ、不眠状態でしたので睡眠薬を処方しました。また母親にはできるだけ仕事の量を減らして、患児と一緒にいてあげるように指導しました。精神安定剤で少し元気になり、不登校児用の学級へ少しずつ通いだしました。また離婚した父親にも会わせて、安らぎを与えました。選択的セロトニン再取り込み剤も使用しましたが、効果を認めました。 燃え尽き症候群はトップランナーが突然走れなくなってしまう状態で、周囲は暖かく、気長に回復を待っていてあげてください。 |
過換気症候群
| 〈Vol. 13〉 過換気症候群 心のストレスによって発作的に過呼吸が持続することにより、呼吸困難感、意識障害、動悸などを起こす過換気症候群について述べます。 過換気症候群は小学校高学年から中学生の女児に多い疾患です。一過性の心因反応や、不安、パニック症候群、あるいはヒステリーの一症状として発現してきます。その原因を究明して根本的な治療をする必要がありますが、一時的な対処法としては、過呼吸発作が起きたら、紙袋を口にあて、呼気に含まれる炭酸ガスを再呼吸させることによって、血中の炭酸ガス濃度の低下を防止する方法が有効であります。また子どもは不安状態でパニックに陥っていますので、周囲の者(学校では養護教論、担任、自宅では保護者)が子どもに紙袋法で楽になるから心配ないと、不安をとり除く努力をしましょう。発作は一過性で病院へ連れて行く必要はありませんが、初めてのときは驚いて、よく救急車で来院されることがあります。そのときに医者からその対処法を教わっておきましょう。 過換気症候群の症状は心のストレスによって発作的に過呼吸が持続することにより、呼吸性アルカローシスになります。その結果、意識レベルが低下し、筋肉のけいれんやしびれ感を訴えます。また呼吸困難感がさらに不安や恐怖を助長し、症状を悪化させます。その症状は周囲に重症感を与えます。診断には、器質的な中枢神経疾患、薬物中毒、低カルシウム血症によるテタニー、心疾患、低血糖発作等の鑑別をしておく必要があります。 13歳の中学校1年生の女の子です。夏の運動部の過激な練習中に急に過呼吸、心悸亢進、四肢のしびれ、胸がしめつけられる感じが初めてありました。2学期になってから、授業中に急に過呼吸、しびれが2回起きたため、近医受診しましたが、不安からきている過換気症候群と診断され、うつ病の薬を処方されました。そのときに紙袋法を教わりました。服用後も学校でのみ過換気症候群は出現していました。給食中に意識を失う過呼吸がありましたので、私の外来を救急車で受診しました。来院時には意識は回復し、血液と尿の検査、脳波、脳のCTでも異常がありませんでした。近医で処方されていた薬は中止し、抗不安薬を処方しましたところ、良くなりました。 過換気症候群は珍しい病気ではなく、最近増加傾向にあります。これは学校でストレスになるようなことが多くあるからでしょう。養護教論はその対処の仕方を知っています。その原因を明らかにして、それに適した治療を行いましょう。 |
不登校
| 〈Vol. 12〉 不登校 不登校について追加します。都内の私立中学校から転校し、栃木県の公立の中学校に転校しましたが、校風やグループに入れてもらえず不登校となりました。 私立小中学校と公立の小中学校では、雰囲気が違います。私立では受験本位の学校もありますが、都内では創立者の考えで、公立ではできない、自由なのびのびとした校風があるところがあります。私の息子たちもカナダの自由なのびのびとした教育のもとで2年間育ったので、日本の公立の教育ではその素質を伸ばしてあげられませんでした。私の転勤で東京から栃木に移り、中学校は二人とも私立中学校へ通わせ、そのため自転車で通学可能の現在の家へ引っ越しました。二人とも中学生生活はエンジョイし、今は二人とも大学生活を親元から離れて、同じ大学でエンジョイしています。 転校は思春期の子にとっては辛い試練です。私も中学校時代に転校し、その悩みを味わいましたが、そのころはまだすしづめ教室で、いじめやグループ化がほとんどありませんでしたので、救われました。 中学校1年生の男の子です。1月に東京の自由教育で有名な私立中学校から、栃木の公立中学校に転校してきました。小学校も同じところでした。転校前から親も子どもも公立中学校へ行くことに不安を抱いていましたが、通学できる範囲に私立中学校はなかったので、教育委員会に母親の母校であり、またいとこが通う学区外である公立中学校を希望しましたが認められませんでした。案の定というか、学区内の中学校では既にグループ化しており、彼がどこかのグループに所属させるようにとは担任はしませんでした。彼は孤独と不安に陥り、翌々日からは学校へ行けなくなりました。担任はそのような事態になっても何の対策も講じようとしないため、親は学校に不信感を抱くようになり、私の外来を開業医からの紹介で、受診しました。私は早速、教育委員会に事情を話して、学区外の母親の母校に転校させてくれるように依頼して、許可を得ました。転校により、うまくいけばよいのですが、それで駄目な時には、県内の私立中学校まで母親が車で送り迎えするか、全寮制の私立中学校へ転校も考えられます。 現在日本は長い不況時代で、多くの親がリストラされています。それとともに子どもたちの転校も多くなっています。特に思春期時代の転校は、親友と別れる辛さは大人が想像する以上に子どもにとって大きなストレスです。学校はいろいろとスクールカウンセラーなど導入していますが、まだまだです。 |
子どものうつ病
| 〈Vol. 11〉 子どものうつ病 うつ病は小児科領域では珍しいですが、うつ状態(抑うつ気分、疲労感、興味の喪失)は中学生以後(男女比はやや女子が多い)にみられます。 はっきりとしたうつ病は小児例では珍しいですが、思春期以後になると人間関係が複雑化し、思春期の特有の心の危機が現れ、受験、失恋、第二次性徴の悩みなどが誘因となってうつ状態となりやすいです。その診断としてICD―10で抑うつ状態を診たり、27項目のCDIによって点数化して、診断します。当然器質的疾患(脳腫瘍、内分泌疾患、薬物、膠原病など)は除外しておきます。 ICD―10は抑うつ気分、興味と喜びの喪失、易疲労感の3項目中2項目以上、集中力の減退、自信の低下、罪責感、将来への悲観的見方、自殺の観念、睡眠障害、食欲不振の7項目中2項目以上を2週間以上に亘るとき、うつ状態と判断されます。 思春期では病初期に抑うつ気分が一時的に現れることがありますので、保護者や教師は「何となく元気がない」、「やる気がない」、「疲れやすい」、「眠れない」などの症状がみいだされましたら、注意深く観察する必要があります。 その治療としては、その原因が家族の不仲、友人関係の悩み、学業不振などであれば、家族と学校関係者などがじっくりと話し合って解決していく必要があります。カウンセリングも効果があります。薬物療法としては子どもの場合重症なうつ病は少ないので、最近認可された副作用の少ない選択的セロトニン再取り込み阻害薬が効果があります。そのほかに抗不安薬、睡眠薬、精神安定剤も効果があります。 中学2年生の女子です。夏休みごろより気分が何となく落ち込み、今まで興味のあったバレー部の練習にも参加しなくなり、疲労感を訴え、また勉強に集中できなくなり、夜は眠れず、食欲もなくなってきました。2学期になっても学校へ行く気がしないで、不登校となり、私の外来を受診しました。 学校でも家庭でも、特に明らかな原因となるものはみつかりませんでした。検査でも異常はみつかりませんでした。しばらく学校は休み、睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬を投与しましたところ、投与2週間過ぎてから、学校へ行くようになり、食欲も回復し、疲労感も消え、活気が戻りました。 うつ状態、うつ病は再燃しやすいものですから、一時的に良くなっても周囲のさりげないサポートが必要です。けして励ましたり、強制的なことはさせないでください。 |












